ハードフォークとは、ブロックチェーンのプロトコルに規定された検証規則を緩和することによって発生するブロックチェーンの分岐のことです。
ハードフォークは、主に仮想通貨(暗号資産)のアップグレードを意味する言葉として利用されます。分散管理された仮想通貨のネットワークを構築する各ノードは最新版ソフトウェアへアップグレードするか否かの選択を迫られます。
この結果、アップグレードを行なった仮想通貨と行わなかった仮想通貨が二つに分岐することになり、これを「フォーク」と言います。そしてフォークした二つの仮想通貨の間で互換性がなくなることをハードフォークと言います。
とりわけ仮想通貨に大規模なルール変更が伴うアップグレードの場合、その前後で互換性を保つことが技術的に困難になるためハードフォークする必要があります。一方、互換性を保った仮想通貨のアップグレードはソフトフォークと呼ばれます。
合意形成が取れた場合のハードフォーク
ハードフォークは大きく二つの形態を取ると考えることができます。
一つは、ハードフォークによって分岐した二つの仮想通貨のうち一方が実質的に消滅するケースです。
仮想通貨の開発方針についてそのコミュニティの意見がまとまっている場合は、アップグレードを行なった仮想通貨をほとんど全てのノードが支持することになります。その結果、支持を失ったもう一方の仮想通貨は実質的に消滅します。
これはコミュニティ全体で十分な合意形成が得られた上で行われるハードフォークであると言えます。具体的な事例としてイーサリアム(単位: ETH)が掲げる開発ロードマップに沿ったハードフォークが挙げられます。2017 年 10 月、ビザンチウムと名付けられたイーサリアムのハードフォークではコミュニティの意見がまとまった上で実行されています。
合意形成が取れなかった場合のハードフォーク
もう一つの形態は、ハードフォークによって分岐した二つの仮想通貨がどちらも存続するケースです。
仮想通貨の開発方針についてそのコミュニティ内部で意見が対立した場合、仮想通貨のアップグレードに対して賛成派と反対派にコミュニティが分裂する場合があります。この状態でハードフォークが実行されると、二つのコミュニティがそれぞれ分岐した通貨を支持するため、どちらも存続します。
このような場合、これまでになかった新たな仮想通貨が出現することになります。これはコミュニティ全体で十分な合意形成を得ることができず、かつ両者の折り合いをつける妥協案も見出せなかった場合に発生すると言われています。
具体的な事例として、 2016 年 7 月にハードフォークした現在のイーサリアムとイーサリアムクラシック(単位: ETC)があります。また、 2017 年 8 月にハードフォークした現在のビットコインキャッシュ(単位: BCH)もビットコインのコミュニティで合意形成に至ることができなかったために発生しました。