bitFlyer コラム

イーサリアムクラシックとは

イーサリアムクラシック(単位:ETC)とは分散型アプリケーション(DApps)やスマートコントラクトを構築するためのプラットフォームです。

コミュニティの合意形成を行う仕組みにはビットコインと同様に Proof of Work(略称: PoW、プルーフ・オブ・ワーク)を採用しています。イーサリアムクラシックは、基本的にはイーサリアムと同様の機能を持っていますが、発行数に上限があり、減少期を定めている点で異なります。

承認速度はビットコインが 10 分を要するのに対し、イーサリアムクラシックは約 15 秒で完了します。通貨単位は「 ETC 」で、最小単位は、 0.000000000000000001 ETC で 1 wei と表現されます。

イーサリアムクラシックの特徴

イーサリアムクラシックは、分散型アプリケーション(英: Decentralized Applications、略称: DApps )を構築するプラットフォームを提供します。構築された DApps は、自動的に契約を実行することのできる「スマートコントラクト」という技術によって、煩雑な手続きや第三者による監視・介入なしにサービスを提供する機能を持たせることができます。

また、イーサリアムクラシック上のプラットフォームで送金を行うことができますが、その際には手数料が必要な場合があります。この手数料はイーサリアムクラシックで支払われますが、プラットフォームを動かす燃料という意味で Gas (ガス)という単位で算出されます。

この Gas はビットコインの送金サービスを利用する際に発生する手数料に似たもので、分散管理されたシステムを円滑に動作させるために必要な仕組みです。これらの手数料はブロックチェーンに記録を行うマイナーに支払われます。

もともと一つの通貨であったイーサリアム(英: Ethereum 、単位: ETH )も 同様の特徴をもち、数多くの DApps の構築を後押ししています。

「THE DAO 事件」イーサリアムクラシック誕生の経緯

2016 年 6 月に発生した THE DAO 事件は、もともと一つのコミュニティで運営されていたイーサリアムを二つに分裂させました。その結果、誕生したのがイーサリアムとイーサリアムクラシックです。

THE DAO はイーサリアムのスマートコントラクトを利用したベンチャーキャピタルの運営を行うことを目的としたプロジェクトでした。イーサリアムの通貨イーサ(英: ether 、単位: ETH )を出資することでベンチャーキャピタルの出資者としてプロジェクトに参加でき、集められた ETH が運用されることで参加者は配当を得ることができる仕組みでした。

一般的に出資を募るためには煩雑な手続きや第三者機関による監査などを必要としますが、 THE DAO はスマートコントラクトによってそれらが自動化される画期的な仕組みを備えていました。しかし、THE DAO の欠陥を突き、プロジェクト開始前に集められていた大量の ETH が何者かによって盗まれてしまいました。

イーサリアムのコミュニティではこの事態への対応策を巡って様々な意見が出されました。コミュニティーの大半が支持したのは、取引記録に変更を加えるアップデートを行い、 ETH が盗まれていなかったことにする対応策です。被害者に ETH を戻し、盗まれた ETH は利用できないようにする措置でした。

一方、この対応策は通貨の信用を支える価値記録(取引記録)の不変性を無視する行為であり、通貨の信頼性を損なうという反対意見も出ました。最終的には前者のアップグレードが決行されることで、 THE DAO 事件は終結しました。

前者は、コミュニティの柔軟な対応により事態を乗り切ることで現在のイーサリアムに発展します。一方、これに賛同できなかった者は、アップデートを行うことなく既存のイーサリアムのネットワークに残ります。

彼らは「コードは法」であるとする価値記録の不変性を貫く従来の方針を引き継ぐために、中心的なコミュニティから分裂することになりました。これが 2016 年 7 月に誕生したイーサリアムクラシックです。

イーサリアムクラシックの今後 IoT 分野での活用

イーサリアムクラシックは、今後マーケットの拡大が見込まれる IoT 分野での利用が目指されています。IoT は「 Internet of Things 」の略称で、モノとモノをインターネットでつなぐことで生活を便利にする技術として近年注目されています。

一方、データの中央化や一極集中によりプライバシーの保護や記録の正当性を確保することが難しい現代の状況で IoT が発展していくことは、私たちの生活に十分な安全性を確保できるのか疑問視する意見もあります。

この点、 THE DAO 事件の経緯から分かるように、イーサリアムクラシックはコードに忠実な姿勢を貫き、価値記録の保護や分散管理に対する高い意識を持ったコミュニティに支えられているといった特徴があります。

このようなイーサリアムクラシックの開発姿勢が IoT 分野の発展にも重要な要素として認識され、その活用が期待されています。