暗号技術に興味をもつ人々が集まるメーリングリストに、サトシ・ナカモトを名乗る人物が2008年に投稿したアイデアがきっかけとなってシステムが作られ、2009年から実際に使われ始めた。2011年頃から巨額の投機資金が流入するようになり注目が集まった。
世界では日常的な買い物の支払いや、銀行預金に代わる資産の持ち方として徐々に使われ始めている。
通貨単位は BTC で、2014年11月現在、1BTC=¥35,000~45,000で取引が行われている。
ビットコインでは、実際に何らかの物質が移動するわけではなく、取引の履歴によって通貨が表現されている。Aさんが持っているコインをBさんに送金するときは、「持っているコインをBさんに送ります」という情報をビットコインのネットワークに流すことになる。
この取引履歴の信頼性を保障するのは、ネットワークに参加しているユーザ全員である。具体的には、取引されたビットコインの前の持ち主が正当な持ち主であることを、「ブロックチェーン」と呼ばれる仕組みによって証明している。これは、一定時間に発生した複数の取引履歴を1つの「ブロック」として記録するものである。1つのブロックには、取引履歴のほかに、直前のブロックの値と「nonce」と呼ばれる特別な値が含まれる。これら3つの情報から、ネットワークに参加するコンピュータによって計算される「ハッシュ」が、ある条件を満たすことでブロックを確定させる鍵の役割を果たし、ブロック・鍵・ブロック・鍵……というふうにブロックチェーンが形成され、それまでの取引履歴が承認されていく。基本的にはブロックチェーンは1本の鎖となるが、同時に複数の人によって鍵が見つけられた、などでチェーンが分岐した場合はどうなるのか。ブロックチェーンには時間の経過とともにどんどんとブロックが付け足されていくが、長いブロックチェーンほどより多くの計算力が費やされていることになるため信頼性が高く、一番長いブロックチェーンが正統なものとして取り扱われることになっている。言い換えれば、ブロックチェーンを偽造するためには、偽造した以降のブロックを正統なブロックチェーンよりも速いスピードで生成しなければならないことになるため、ブロックチェーンの偽造は困難である。
ところで、取引されているビットコインはどこから生まれたものなのか。ビットコインの取引を承認しブロックを確定させるためには、鍵となる情報(=ハッシュが条件を満たす特定の値になる nonce )を計算することが必要なことだが、ここにビットコインの肝がある。実は、条件を満たすような nonce の算出をハッシュからの逆算で行うことは事実上不可能で、現実的にはすべての数を総当り方式で試していくしかないため、コンピュータの計算力が必要になっている。そこで、その困難な作業に成功した者には、報酬として新たなコインが与えられる仕組みになっている。この計算作業は、金の採掘になぞらえて「マイニング」と呼ばれている。通貨供給量を安定させ価格の上下を小さくするため、マイニングで正しい nonce が出る確率は、そのときにマイニングに参加している全てのコンピュータの計算力に応じて、平均して10分間に1回になるように調整される。この割合は約4年毎に半減していくことになっていて、2016年末ごろには12.5BTCに、その4年後には6.25BTCになっていく予定。そして 2140年までに合計約2,100万BTCが生み出されると、それ以降は新たなコインは生成されないことになっている。
前述のように、ビットコイン自体が偽造される可能性は低く、ビットコインのシステム自体の安全性は高い。
しかし、ビットコインは暗号データでしかないため、コンピュータの故障などでデータが消失する危険がある。この危険に対応するために「口座番号」にあたるビットコインアドレスと「印鑑」に当たるプライベートキーがひとまとめに記載されている「ペーパーウォレット」というものがあるが、これを利用している場合には、今度はペーパーウォレットを紛失すると他人にビットコインを盗まれる可能性が高くなる。
また、これらとは別に取引所の安全性の問題も存在する。これが顕在化したのが2014年2月に発生した、大手取引所である Mt. Gox (マウントゴックス)がコインを盗まれ破産に至った事件である。
取引所とは、基本的には銀行のようなものと考えておけばよい。
まず、ビットコインの利用者は主に取引所を介して円やドルなどとビットコインの交換を行う。ちなみに、その際の交換レートも通常の通貨と同様に市場原理によって決まる。
ビットコインの特性として、一定数の取引履歴のブロックごとに決済を行うというものがあるが、取引所では、これに先立ってビットコインを口座間で移動させて、決済にかかる時間を短縮することができる。
また、前述のように、ビットコインに参加するコンピュータは同時にマイニングをも行う必要があるが、それをまとめて行う役割も担っている。
これらの作業を行っている取引所には、規制は存在せず、どのような事業者でも参入することができる。実際に、前述のMt. Goxはビットコインを手がける以前はトレーディングカードの取引を扱っていた。このように参入障壁の低さが魅力としてある一方で、マネーロンダリングなどを目的とした悪質な業者が紛れ込む可能性も指摘されている。
現在、日本政府はビットコインを通貨でも有価証券などの金融資産でもないとして、金融機関の取り扱いを禁止している。ここには通貨発行権の独占と課税という2つの目論見が伺える。しかし、現状では国によるビットコインの利用に対するなどは行われていない。
また、ビットコインはデジタルデータであるため、法律上「物」と捉えることも難しく、窃盗罪などの対象にならない可能性もある。
- 斉藤賢爾『これでわかったビットコイン:生きのこる通貨の条件』(太郎次郎社エディタス)
- 吉本佳生、西田宗千佳『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』(ブルーバックス)